電線には、どれだけでも電流を流せるわけではありません。
電線ごとに安全に使用するために考えなければならない「許容電流」があり、電線の太さや種類、配線方法などによってその値は変わります。
もし電線に適切な範囲を超える電流が流れ続けると、電線の温度が上昇し、絶縁被覆の劣化や事故につながるおそれがあります。
そのため、電気工事では負荷に対して適切な電線を選び、過電流保護装置と組み合わせて回路を保護することが重要です。
この記事では、「許容電流とは何か?」という基本から、電線の太さ・発熱・過負荷・ブレーカーとの関係まで、初心者にも分かりやすく解説します。
第二種電気工事士を勉強している人も、ぜひ押さえておきたい内容です。
許容電流とは?
許容電流とは、電線やケーブルを使用するときに、その使用条件のもとで許容できる電流のことです。
簡単にいえば、
「この電線には、どのくらいの電流を流せるのか?」
を考えるための重要な値です。
電線に電流が流れると、電線が持つ電気抵抗によって熱が発生します。
電流が大きくなるほど発熱も大きくなるため、適切な電線を選ぶ必要があります。
ここで大切なのは、許容電流は「電線の太さだけ」で決まるわけではないということです。
電線の種類や太さだけでなく、周囲温度や配線方法、同じ管などに収める電線の本数といった条件によっても、実際に許容できる電流は変わります。
そのため、電気工事では使用条件まで含めて適切な電線を選定することが重要です。
なぜ電線に電流を流すと熱くなるの?
電線には電気抵抗があります。
そのため、電線に電流が流れると電気エネルギーの一部が熱になります。
このとき発生する電力は、次の式で表すことができます。
P=I²R
P:電力[W]
I:電流[A]
R:抵抗[Ω]
この式で特に注目したいのが、「I²」の部分です。
例えば、同じ抵抗の電線に流れる電流が2倍になれば、発生する熱に関係する電力は単純な2倍ではなく4倍になります。
そのため、大きな電流を流す回路では、電線の発熱について十分に考える必要があります。
許容電流を理解するときは、
「電線に電流が流れる → 抵抗によって発熱する → 温度が上昇する」
という流れを覚えておくと分かりやすいでしょう。
電線が太いほど大きな電流を流せるのはなぜ?
同じ材質・同じ長さで比較すると、断面積の大きな電線ほど電気抵抗は小さくなります。
電気抵抗は、基本的に次の関係で表せます。
R=ρL/A
R:抵抗[Ω]
ρ:抵抗率
L:電線の長さ
A:断面積
この式を見ると、断面積Aが大きくなるほど抵抗Rは小さくなることが分かります。
つまり、一般的には太い電線ほど抵抗が小さく、同じ電流を流したときの発熱を抑えやすくなります。
そのため、太い電線ほど大きな許容電流を持つ傾向があります。
ただし、
「太ければ何Aでも流せる」
という意味ではありません。
実際の許容電流は、電線の種類や絶縁物、配線方法、周囲温度などによって異なります。
許容電流は電線の太さだけでは決まらない
初心者のうちは、
「太い電線=許容電流が大きい」
と覚えても基本的な方向性としては間違いではありません。
しかし、実際の電気工事ではそれだけでは不十分です。
許容電流に関係する主な条件として、
・電線やケーブルの種類
・導体の太さや断面積
・絶縁物の種類
・配線方法
・周囲温度
・電線をまとめて施工する場合の条件
などがあります。
例えば、電線の周囲に熱がこもりやすい条件では、同じ電線でも温度が上昇しやすくなります。
つまり、同じ太さの電線だからといって、どのような場所・施工方法でも同じ条件で使用できるとは限りません。
実際に電線を選定するときは、使用する電線やケーブルの仕様、施工条件、関係する基準などを確認する必要があります。
許容電流を超えるとどうなる?
電線に許容範囲を超える電流が流れ続けると、電線の温度が上昇するおそれがあります。
温度が過度に上昇すると、電線の絶縁被覆の劣化などにつながり、安全な使用ができなくなる可能性があります。
そこで重要になるのが、配線用遮断器などの過電流保護装置です。
回路に過大な電流が流れたとき、適切に設計された保護装置によって回路を遮断し、電線などを保護します。
ここで覚えておきたいのが、
「ブレーカーは家電を守るためだけにあるものではない」
ということです。
配線用遮断器には、過負荷や短絡などによる過電流から配線を保護する重要な役割があります。
そのため、電線とブレーカーは別々に考えるのではなく、回路全体として適切に選定する必要があります。
許容電流と過負荷の関係
許容電流を理解するうえで、「過負荷」との関係も重要です。
例えば、一つの回路で多くの電気機器を使用すると、回路に流れる電流が大きくなることがあります。
電流が大きくなりすぎると、電線の発熱も大きくなります。
そのため、電気設備では電線の許容電流を考慮しながら、過電流保護装置を適切に設ける必要があります。
以前の記事で解説した「過負荷」と今回の「許容電流」は、ここでつながります。
過負荷
↓
回路に大きな電流が流れる
↓
電線の発熱が大きくなる
↓
適切な過電流保護が必要
という流れで理解すると分かりやすいでしょう。
許容電流と電圧降下は何が違う?
電線の太さを考えるとき、「許容電流」と「電圧降下」は混同しやすいポイントです。
どちらも電線選定に関係しますが、考えている内容は異なります。
許容電流は、
「その使用条件で、電線にどれだけの電流を流せるか」
という考え方です。
一方、電圧降下は、
「電線の抵抗によって、負荷側までにどれだけ電圧が低下するか」
という考え方です。
例えば、許容電流の面では条件を満たしていても、配線距離が長ければ電圧降下について別途検討が必要になる場合があります。
そのため、電線を選ぶときは、
「許容電流を満たしているから終わり」
ではありません。
許容電流と電圧降下は、それぞれ別の視点から確認することが大切です。
単線の「直径」とより線の「断面積」の違い
電線の太さを表すときは、表記方法にも注意が必要です。
電気工事でよく使われるVVFケーブルなどの単線では、
1.6mm
2.0mm
のように、導体の直径で表されるものがあります。
一方、より線では、
2mm²
3.5mm²
5.5mm²
のように、導体の公称断面積で表されるものがあります。
ここで、
「2.0mm」と「2.0mm²」
は同じ意味ではありません。
mmは長さを表す単位で、mm²は面積を表す単位です。
電気工事士の勉強でも混同しやすい部分なので、
単線 → 直径[mm]
より線 → 公称断面積[mm²]
という違いを意識しておきましょう。
第二種電気工事士では許容電流が重要
許容電流は、第二種電気工事士を勉強するうえでも重要なテーマです。
第二種電気工事士の学科試験では、電気の基礎だけでなく、配電理論や配線設計についても出題されます。
電気技術者試験センターが公開している学科試験の例題資料でも、「使用される電線の太さと許容電流の関係」を理解することが重要とされています。
そのため、
・電線の太さ
・許容電流
・過電流
・ブレーカー
・分岐回路
などをバラバラに暗記するのではなく、それぞれの関係を理解しておくことが大切です。
許容電流は実際の電気工事にも関係する重要な考え方なので、試験のためだけの知識としてではなく、「なぜこの太さの電線が必要なのか?」まで考えながら勉強すると理解しやすくなります。
許容電流は「数字の丸暗記」だけにしない
許容電流を勉強すると、電線の太さと電流値を表にして覚えることがあります。
もちろん、試験対策として必要な数値を覚えることは大切です。
しかし、
「なぜ電線ごとに流せる電流が違うのか?」
まで理解しておくと、知識がつながりやすくなります。
基本となる考え方は、
電線には抵抗がある
↓
電流が流れると発熱する
↓
電流が大きくなるほど発熱も大きくなる
↓
安全に使用するために許容電流を考える
という流れです。
さらに実際の設備では、電線の種類・配線方法・周囲温度などの条件も関係します。
まずはこの仕組みを理解したうえで、試験で必要になる電線の太さや許容電流を覚えていくとよいでしょう。
まとめ
今回は、電線の許容電流について解説しました。
ポイントをまとめると、
・許容電流は、電線を安全に使用するために重要な値
・電線に電流が流れると、抵抗によって熱が発生する
・発熱は「P=I²R」で考えることができる
・一般的に、太い電線ほど大きな電流を流せる
・許容電流は電線の太さだけで決まるわけではない
・電線の種類、配線方法、周囲温度なども関係する
・許容電流と電圧降下は別の考え方
・電線と過電流保護装置は、回路全体として考えることが重要
許容電流は、「電線の太さを覚えるだけ」の話ではありません。
電流・抵抗・発熱・過負荷・ブレーカー・電圧降下など、これまで学んできた電気の知識がつながる重要なテーマです。
「なぜこの電線を使うのか?」まで理解できるようになると、電気工事士の勉強だけでなく、実際の電気設備を理解する力も身についていきます。


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