MOTOR CONTROL / ELECTROMAGNETIC BRAKE
「ブレーキ付モーターの同時切り・別切りって何が違う?」
「電源を切ったのに、すぐ止まらないのはなぜ?」
この違いを理解するには、モーターを回す電源と、ブレーキを開放する電源を分けて考えることが大切です。
この記事では、無励磁作動形ブレーキを備えたモーターを中心に、同時切り・別切りの意味、制動が始まるまでの遅れ、インバータ運転時の注意点を解説します。
モーターブレーキとは?まずは動作の基本
モーターブレーキは、モーター軸の回転を止めたり、停止した負荷を保持したりするための装置です。ただし、制動に使えるタイプと、停止後の保持を目的とするタイプでは、使用条件が異なります。
ここで扱う無励磁作動形は、ばねの力でブレーキをかけ、電磁石の力で開放する方式です。
電磁石がばねの力に逆らって動き、ブレーキを開放します。モーター軸が回転できる状態になります。
電磁石の吸引力が失われ、ばねの力で摩擦面が押し付けられます。ブレーキが作動します。
無励磁作動形では、通電で開放、遮断で作動します。また、ブレーキを開放しただけではモーターは回りません。回転にはモーター側の駆動が必要です。
同時切りとは?共通の接点で電源を切る方式
一般的なAC同時切りでは、モーターとブレーキ用整流器が、共通の開閉接点の負荷側につながっています。接点を開くと、両方への交流電源の供給が同時に遮断されます。
回転させる電源
ブレーキを開放する電源
構成をまとめやすい一方、この方式では、遮断後もモーターとブレーキ回路のつながりが残ります。モーターの回転に伴う発電作用などでブレーキ側への電流が残り、制動開始までの遅れが長くなる場合があります。
つまり、電源を同時に切ることと、機械がその瞬間に停止することは別です。
別切りとは?別の接点でブレーキ側も遮断する方式
AC別切りでは、モーター側とブレーキ用整流器の交流入力側を、それぞれ別の接点で遮断します。遮断時にモーター側からブレーキ側へ電流が回り込む経路を切り離す構成です。
↓
モーター
↓
整流器 → ブレーキコイル
同じ停止指令で、モーター側とブレーキ側の接点を同時に開く場合もあります。「どの経路を遮断するか」と「いつ遮断するか」は分けて考えましょう。
AC別切りは、AC同時切りより制動開始までの遅れを短くできる場合があります。ただし、停止位置の精度や停止時間は、ブレーキだけでなく回転速度・負荷・慣性にも左右されます。
AC同時切り・AC別切り・DC切りの違い
同時切り・別切りに加えて、整流器の直流側を遮断するDC切りがあります。メーカーによって「早切り」「急制動」などの表現も使われるため、名称と実際の回路をセットで確認します。
| 方式 | 主な遮断箇所 | 制動開始までの遅れの傾向 |
|---|---|---|
| AC同時切り | モーターと整流器に供給する共通の交流側 | 比較的長くなりやすい |
| AC別切り | モーター側と、整流器の交流入力側を別の接点で遮断 | 同時切りより短くできる場合がある |
| DC切り | 整流器の直流側にあるメーカー指定の回路 | さらに短くできる場合がある |
同一製品で指定された回路を比較したときの一般的な傾向です。方式への対応、必要な交流側の遮断、接点・保護素子の条件は製品ごとに異なります。
DC切りは、接点とサージ対策も重要
ブレーキコイルは誘導負荷です。直流側の遮断では接点にアークやサージが生じるため、直流の誘導負荷を遮断できる接点容量と、指定された保護回路を確認します。
交流負荷での定格だけを見て接点を選んだり、保護素子を自己判断で追加したりすると、接点寿命や制動応答に影響することがあります。整流器によってはDC切りに対応していないため、任意の位置を切ればよいわけではありません。
電源OFFから停止までには、2つの時間がある
「ブレーキが遅い」という話では、効き始めるまでの時間と、効き始めてから止まるまでの時間を区別すると整理しやすくなります。
たとえば三菱電機のGM-Sに関するFAQでは、同時切りは0.2~0.55秒、別切りは0.1~0.3秒、早切りは0.01~0.04秒で制動時間に移行すると説明されています。
これは当該シリーズについて示された値であり、すべてのモーターの停止時間ではありません。別の機種や使用条件に、そのまま当てはめないようにしましょう。
また、制動開始までの遅れを短くしても、重い負荷や大きな慣性を止めるには時間がかかります。停止位置を検討するときは、遅れ時間だけでなく、制動トルクや許容制動仕事量なども確認します。
インバータ運転では、ブレーキ電源を分けて考える
インバータは、モーターに供給する周波数や電圧を変えて回転を制御します。一方、ブレーキ用整流器には、指定された電圧・周波数の電源が必要です。
そのため、一般的なブレーキ用整流器を、インバータ出力端子U・V・Wから給電してよいとは考えないことが大切です。メーカー指定に従い、インバータ出力とは別の適切な電源経路から供給します。
椿本チエインのパワーシリンダUシリーズの資料でも、インバータ使用時はブレーキを別切りとし、DCモジュールにインバータ出力ではない通常の電源電圧を供給するよう指定されています。
停止指令とブレーキ作動のタイミングは別に確認する
インバータの停止指令をOFFした直後でも、減速中はモーターが回っている場合があります。その途中で機械式ブレーキを作動させてよいかは、ブレーキの用途と許容条件によります。
特に保持用ブレーキでは、通常の停止は駆動装置で行い、停止後の保持にブレーキを使う構成が基本になります。昇降軸では、ブレーキの開放・作動と、負荷を支えるモータートルクの受け渡しも必要です。
開放時間、作動時間、負荷条件、駆動装置のブレーキ制御機能を確認し、設備として指定されたシーケンスに従います。別切りにしただけで、適切な制御になるわけではありません。
保持用ブレーキと制動用ブレーキを混同しない
「電磁ブレーキ付き」と書かれていても、回転中の負荷を繰り返し止められるとは限りません。
- 制動用:許容される回転速度、慣性、制動仕事量、使用頻度などの範囲で回転を止めます。
- 保持用:停止した軸や負荷の位置を保持します。通常の回転停止には使えない製品があります。
たとえば、オリエンタルモーターのサーボモーター向け保持ブレーキの資料では、回転中の負荷を停止させる制動用途には使用しないよう説明されています。
また、無励磁作動形であっても、単独で設備全体の落下防止や安全を保証するものではありません。昇降用途では、必要な保持能力、故障時の動作、機械側の落下防止策を含めて検討します。
図面や現場で確認するポイント
-
モーター・ブレーキ・整流器の形式
銘板と取扱説明書を照合し、電源定格と対応する結線方式を確認する。 -
整流器への給電元
共通接点の負荷側か、独立した経路か、インバータ出力につながっていないかを図面で確認する。 -
遮断する接点の位置と定格
交流側・直流側のどちらを切るか、誘導負荷の遮断容量と保護素子が指定どおりかを確認する。 -
制動と保持の使用条件
負荷、慣性、停止頻度、許容制動仕事量、ブレーキの摩耗やギャップを確認する。 -
起動・停止・停電時の動作
駆動装置の指令、モータートルク、ブレーキの開放・作動の関係を確認する。
保守で電源を切る場合も、別切りではブレーキ側の電源が残る可能性があります。すべての給電経路を遮断・施錠し、無電圧を確認するとともに、負荷を機械的に支持してから作業します。
まとめ
- 無励磁作動形は、通電で開放、遮断でブレーキが作動する。
- 同時切り・別切りは、主に電源回路と遮断接点の構成の違いを表す。
- 別切りは、必ずしも時間差をつけて切るという意味ではない。
- 電源遮断から制動開始までの遅れと、完全停止までの時間を分けて考える。
- インバータ運転では、ブレーキの給電元と作動タイミングを確認する。
図面を読むときは、「モーターを回す経路」と「ブレーキを開放する経路」を追ってみましょう。どこを遮断すると何が起きるのかが見えてくると、同時切り・別切りの違いも理解しやすくなります。

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