自己保持回路とは?リレーの仕組みとラダー図を初心者向けに解説【制御・PLC】

制御・PLC

CONTROL & PLC / 制御の基礎

始動ボタンを一度押すと、手を離しても運転が続く。停止ボタンを押すと止まる。この基本動作をつくる代表的な回路が「自己保持回路」です。

自己保持回路は、リレーなどの自分自身の接点を使い、始動操作が終わった後も動作を継続する回路です。

この記事では、リレーを使った基本回路とラダー図を見ながら、始動・保持・停止の仕組みを順番に解説します。PLCで表すときの考え方も紹介します。

自己保持回路とは?

一般的な復帰形のリレーは、コイルへの入力を切ると元の状態へ戻ります。そのため、始動ボタンとコイルを直列につないだだけでは、ボタンを押している間しか動作しません。

そこで、リレーのa接点を始動ボタンと並列に接続します。リレーが動作すると自分のa接点が閉じ、ボタンとは別の通電経路ができます。

この経路によって、始動ボタンから手を離してもコイルへの通電が続きます。

自分の接点で、自分の動作を続ける

これが「自己保持」の名前の由来です。リレーの中に電気を蓄えるのではなく、外部電源からコイルへ通電し続けています。

基本回路に使う3つの要素

要素 接点・構成 役割
始動ボタン S1 a接点・モーメンタリ 押すと閉じ、リレーを動作させる
停止ボタン S0 b接点・モーメンタリ 押すと開き、コイルへの通電を切る
リレー K1 コイルと自己保持用a接点 動作すると自分のa接点を閉じる

モーメンタリとは、操作している間だけ状態が変わり、手を離すと元へ戻る方式です。ボタン自体が押された状態を保持する方式とは区別します。

ラダー図で見る自己保持回路

下は、停止ボタンS0を共通の経路に入れ、その後で始動ボタンS1とK1のa接点を並列にした基本図です。

BASIC CIRCUIT|停止優先の自己保持

リレーK1の自己保持回路 左の電源母線から停止ボタンS0のb接点を通り、始動ボタンS1のa接点とK1のa接点の並列部分を経て、K1コイルと右の電源母線につながる。 + - S0 停止 S1 始動 K1 a接点 K1 コイル 始動ボタンと並列の接点が、自己保持経路
DC電源の基本概念図です。接点はボタンを操作せず、リレーが無励磁の状態で表示しています。保護回路や実際の端子番号は省略しています。

図を読むときのポイント

  • S0:押していないときは閉じ、押すと開くb接点。
  • S1:押していないときは開き、押すと閉じるa接点。
  • K1のa接点:K1コイルが励磁されると閉じる。
  • 同じK1の表示:コイルと、その動作で切り替わる接点の関係を示す。

コイルと接点は図の離れた位置に描かれていても、同じリレーに属しています。実物の配線配置ではなく、電気的なつながりを読む図です。

始動・保持・停止の動きを追ってみよう

停止中|始動する経路が開いている

S0のb接点は閉じていますが、S1とK1のa接点はどちらも開いています。そのため、K1コイルへ電流が流れません。

始動|S1を押してK1を動かす

S1を押すとa接点が閉じます。S0、S1を通る経路が成立し、K1コイルが励磁されます。

K1が動作すると、自己保持用のK1のa接点も閉じます。これで、S1を通らない別の通電経路ができます。

保持|S1を離してもK1の接点がつなぐ

S1を離すと始動接点は開きます。しかし、K1のa接点が閉じているため、そちらを通ってコイルへの通電が続きます。

停止|S0で両方の経路を切る

S0を押すと、共通経路のb接点が開きます。始動ボタン側と自己保持接点側の両方から、K1コイルへ通電できなくなります。

K1が復帰して自己保持用a接点が開くため、S0から手を離しても、S1を押していなければ停止状態を保ちます。

状態 S0停止接点 S1始動接点 K1コイル K1 a接点
停止中 閉 開 OFF 開
始動して動作後 閉 閉 ON 閉
始動ボタンを離す 閉 開 ON 閉
停止して復帰後 開 開 OFF 開

なぜa接点を始動ボタンと並列にする?

並列にすることで、「始動ボタンが閉じている」または「自分のa接点が閉じている」のどちらかで、コイルへの経路を成立させられます。

最初は始動ボタンがK1を動かし、その後はK1自身の接点が動作を引き継ぎます。

自己保持用a接点を始動ボタンと直列にすると、停止中はそのa接点が開いているため、ボタンを押しても始動できません。

始動ボタンと自己保持接点はOR、停止条件は共通

停止接点は、始動経路と保持経路の両方を切れる位置に入れます。停止接点まで自己保持接点で迂回すると、停止できない回路になり得ます。

停止優先とは?|同時に押したときの動作

上の回路では、始動ボタンと停止ボタンを同時に押しても、S0が開くためK1へ通電できません。これを停止優先の構成と考えられます。

ただし、始動ボタンを押し続けたまま停止ボタンだけを離すと、再びK1が動作します。停止優先とは、再始動防止のすべての条件を満たすという意味ではありません。

この基本回路は、非常停止用の完成回路ではありません。安全機能には、接点故障や配線短絡、予期しない再始動などを考慮した、別途の安全設計が必要です。

電源が切れたら自己保持はどうなる?

一般的な復帰形リレーでは、電源が失われてコイルが復帰すると、自己保持用a接点が開きます。

その後、電源が戻っても、始動ボタンが開いていればコイルへ通電する経路がないため、自己保持は再開しません。

ただし、短い電圧低下ではリレーが復帰しない場合もあります。また、始動ボタンの押しっぱなしや接点の故障があると、復電時の動作は変わります。

SELF-HOLDING CIRCUIT

一般リレーの自己保持

自分の接点を使い、外部電源からコイルへ通電し続ける回路です。

LATCHING RELAY

ラッチングリレー

磁気的・機械的な保持機構などにより、駆動入力を切った後も接点状態を保持する機器です。

どちらも「保持」という言葉を使いますが、仕組みや停電時の動作は異なります。

PLCでは自己保持をどう表す?

PLCでも、始動条件と自分のビットの条件を並列にし、停止許可を共通条件として、同じ考え方を表せます。

保持ビットMをONにする条件
停止許可がON、かつ「始動入力がON、またはMがすでにON」

保持を解除する条件
停止許可がOFFになったとき。

物理的なb接点と、ラダーのb接点命令は別

たとえば停止ボタンの物理的なb接点を、入力X0へつなぐ構成を考えます。正常な配線・入力条件なら、ボタンを押していないときX0はON、押すとOFFになります。

この場合、停止許可をプログラムで読むには、X0がONのときに成立するa接点命令を使う考え方になります。

「停止ボタンがb接点だから、プログラムもb接点命令」と機械的に置き換えてはいけません。入力ビットがどの操作でON・OFFするかを確認します。

停電後の状態は、PLCの仕様とプログラムによる

PLCでは、使用するデバイスが保持領域か非保持領域か、初期化や再始動処理がどうなっているかで、電源復帰後の状態が変わります。

リレー回路と同じ図の形にしただけで、停電時まで同じ動作になるとは限りません。また、同じビットへの重複した出力命令などは、プログラムの動作を不明確にする原因になります。

自己保持とインターロックの違い

項目 自己保持 インターロック
主な目的 始動操作後も動作を継続する 条件に応じて動作を禁止する
基本例 自分のa接点を始動ボタンと並列にする 相手側のb接点をコイル回路へ直列に入れる
正逆転回路での役割 選んだ運転を続ける 正転側と逆転側の同時投入を防ぐ

自己保持とインターロックは、同じ回路内で併用できます。「続けるための接点」と「禁止するための接点」を分けて読むと、意図が理解しやすくなります。

自己保持できないときの確認ポイント

  • ボタンを押しても動かない:電源、停止条件、コイル定格、始動経路を確認する。
  • 押している間だけ動く:自己保持用a接点の端子や、始動ボタンとの並列接続を確認する。
  • 停止できない:停止接点が保持経路も遮断できる構成か、接点故障がないか確認する。
  • 動作が不安定:電源電圧、電圧降下、接点・配線の接続状態を確認する。
  • PLCで想定と違う:入力ビットの状態、命令の種類、保持設定、ほかの書込み箇所を確認する。

点検では設備を安全な状態にし、実機の図面と機器仕様に従います。停止条件を短絡して運転するなどの方法で、不具合を回避しないでください。

まとめ

  • 自己保持:始動ボタンを離しても動作を続ける回路。
  • 基本構成:自分のa接点を、始動ボタンと並列に入れる。
  • 停止:始動経路と保持経路に共通する接点で通電を切る。
  • 電源断:一般リレーが復帰すれば保持は解除されるが、復電時の条件も確認する。
  • PLC:物理接点と入力ビット、接点命令を区別する。

自己保持回路は、「始動ボタンがきっかけをつくり、自分の接点が通電を引き継ぐ」と考えると理解しやすくなります。図面では、始動時と保持時の経路をそれぞれ追ってみましょう。

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