ELECTRICAL INSTALLATION / 電気工事の基礎
「この電線には何アンペア流せる?」「太い電線なら大丈夫?」。配線を考えるときに欠かせないのが、電線の許容電流です。
許容電流とは、決められた使用条件で、電線の温度を許容範囲に保ちながら流せる電流です。
一般に電線が太いほど大きな電流を流しやすくなりますが、太さだけでは値は決まりません。この記事では、発熱との関係、mmとsqの違い、温度・配線方法による変化、許容電流表の読み方を解説します。
電線の許容電流とは?
電線に電流が流れると、導体の抵抗によって熱が発生します。許容電流は、その温度上昇を一定の範囲に抑え、電線や絶縁材料の性能を損なわないように定められています。
単位はA(アンペア)です。ただし、その電線なら、どんな場所でも同じ電流を流せるという意味ではありません。
同じサイズでも、電線の種類、周囲温度、管やダクトへの収め方、近くに並ぶケーブルの数などによって変わります。
許容電流は、通常の通電時の熱的な条件を扱う基準です。短絡時の耐量や、電圧降下、機械的な強度などは、別に確認する必要があります。
なぜ電流が増えると電線が熱くなる?
電線の導体にも抵抗があります。そこで熱に変わる電力は、基本的に次の式で表せます。
CONDUCTOR HEATING
P損失 = I² × R
電流[A]の2乗 × 抵抗[Ω]
抵抗が同じなら、電流が2倍になると発熱による電力損失は4倍になります。温度上昇は、発生する熱と、周囲へ逃がせる熱のバランスで決まります。
HEAT GENERATION
発生する熱
流れる電流や導体抵抗などに左右されます。電流が大きいほど発熱も増えます。
HEAT DISSIPATION
逃がせる熱
周囲温度や配線方法、ほかの電線との配置などに左右されます。
放熱しにくい場所では、同じ電線・同じ電流でも温度が上がりやすくなります。これが、配線条件によって許容電流が変わる理由です。
電線が太いほど許容電流が大きくなる理由
同じ材質・長さ・温度なら、導体の断面積が大きいほど抵抗は小さくなります。同じ電流を流した場合、抵抗による発熱を小さくできます。
そのため、同じ種類・同じ布設条件で比較すると、一般に太い電線ほど許容電流は大きくなります。
ただし、断面積が2倍なら許容電流も2倍、という単純な比例関係ではありません。導体の形状や放熱、絶縁材料なども関係するため、適用する表や計算で確認します。
被覆の外径ではなく、導体サイズを見る
外から見たケーブルの太さには、絶縁体やシースの厚さも含まれています。外径が太くても、導体の断面積が大きいとは限りません。
サイズを確認するときは、電線の表示や仕様書で、導体径または公称断面積を確認します。
「2.0mm」と「2sq」は違う
電線サイズには、導体の直径を示すmmと、導体の公称断面積を示すmm²(sq)があります。
| 表示例 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 2.0mm | 単線の導体直径が2.0mm | 断面積が2mm²という意味ではない |
| 2mm²・2sq | 導体の公称断面積が2mm² | 外径や導体直径が2mmという意味ではない |
EXAMPLE|直径2.0mmの単線の断面積
≈ 3.14 × 2.0² ÷ 4
≈ 3.14mm²
直径2.0mmの円形導体は、幾何学的には約3.14mm²です。2.0mmと2sqは同じサイズではありません。
より線は、複数の細い素線をまとめた導体です。素線間の隙間もあるため、より線全体の外径から単純に銅の断面積を求めることはできません。
許容電流を変える主な条件
電線・ケーブルの種類
IV、VVF、CVなどは、絶縁材料や構造、使用条件が異なります。同じ導体サイズでも、許容電流が同じとは限りません。
銅導体とアルミ導体など、導体材料が異なる場合も、同じ断面積の値をそのまま使えません。
周囲温度
周囲が高温だと、電線が温度上限へ達するまでの余裕が小さくなります。許容電流表の基準温度と実際の温度が異なる場合は、対応する補正を行います。
基準温度は資料や電線の種類によって異なります。「どの表も同じ温度条件」とは考えず、注記を確認します。
管・ダクト・断熱材などの布設条件
空気中で放熱しやすい状態と、管やダクト内、断熱材に囲まれた状態では、熱の逃げ方が異なります。
電線を収める場所や、実際の施工方法に合った許容電流を確認します。
通電する電線の数・ケーブルの配置
複数の電線が同じ管に入る場合や、多数のケーブルを近接して布設する場合は、互いの発熱の影響を受けます。
必要に応じて、電流減少係数や多条布設の低減率などを適用します。ただし、数える電線や心線の扱いは、適用する資料の条件に従います。
電線の種類、通電する本数、配列、間隔、布設方法で条件が変わります。該当する表と注記を合わせて確認しましょう。
許容電流表は、どの順番で読む?
- 電線を特定する:種類、導体材料、単線・より線、サイズ、心数を確認する。
- 布設条件を確認する:気中、管内、ダクト内など、実際の施工方法を整理する。
- 表の基準条件を読む:周囲温度、通電心数、配列、条数などを確認する。
- 必要な補正を適用する:温度や集合状態など、該当する条件を反映する。
- 負荷・保護機器と照合する:運転電流、ブレーカーの特性、端子などの定格も確認する。
「14sqは何A?」という質問も、電線の種類や布設条件が決まらなければ、ひとつの数値では答えられません。
EXAMPLE|補正係数を使う考え方
仮に、基準条件での許容電流が40A、適用する温度補正係数が0.8と指定されている場合を考えます。
= 32A
これは補正の考え方を示す仮の例です。40Aや0.8は、特定の電線・温度に対応した値ではありません。
表にすでに含まれる補正を、重ねて適用しないようにします。複数の係数をどう扱うかも資料の指定に従い、自己判断で掛け合わせないことが大切です。
許容電流とブレーカーの定格電流は別
許容電流は電線側の条件、定格電流はブレーカーなどの機器側の基準です。同じ数値が書かれていても意味は異なります。
| 用語 | 対象 | 意味 |
|---|---|---|
| 負荷電流 | 機器・回路 | 実際に流れる電流、または設計で想定する電流 |
| 許容電流 | 電線・ケーブル | 指定条件で温度を許容範囲に保ちながら流せる電流 |
| 定格電流 | ブレーカーなど | 規定条件での連続通電などに関する基準 |
配線を保護するには、負荷電流、補正後の許容電流、ブレーカーの定格や動作特性が適切な関係になっている必要があります。
ただし、モーター回路などには個別の選定条件があります。単純な大小関係だけで、すべての回路を決定することはできません。
ブレーカーが落ちるからといって、定格だけを大きくしてはいけません。既存配線の許容電流を超える電流が流れ続け、過熱するおそれがあります。
電圧降下も、許容電流とは別に確認する
許容電流を満たしていても、配線が長いと、機器に届く電圧が不足することがあります。これが配線の電圧降下です。
電線サイズの選定では、温度上昇の確認と、機器側の電圧の確認を分けて行います。
電圧降下対策で太い電線が必要になる場合もあります。また、短絡時の熱的な耐量、機械的強度、端子へ接続できるサイズなども確認します。
よくある疑問
許容電流を少し超えたら、すぐに燃える?
超えた瞬間に必ず発火するという意味ではありません。温度上昇は、電流の大きさ、通電時間、放熱状態などで変わります。
ただし、それを理由に許容電流を超えて使い続けてはいけません。絶縁材料の劣化や寿命低下、過熱につながるおそれがあります。
短時間なら、許容電流を超えてもよい?
短時間通電や間欠負荷、始動電流、短絡電流には、それぞれ別の検討が必要です。「短時間だから大丈夫」と自己判断せず、電線と保護機器の条件に従います。
200Vにすると、電線の許容電流は増える?
電線の種類と布設条件が同じなら、100Vから200Vに変えたという理由だけで、熱的な許容電流が増えるわけではありません。
同じ電力・同じ力率の負荷なら、200V側の必要電流を小さくできます。ただし、電線の定格電圧や器具の適合性も確認します。
太い電線を使えば、どこも安全になる?
電線が太くても、端子、コネクター、コンセント、電源コードなどが同じ電流に対応するとは限りません。
接続不良による局所的な発熱は、回路全体の電流が許容範囲でも起こり得ます。電流の経路全体を確認することが大切です。
まとめ
- 許容電流:指定条件で、電線の温度を許容範囲に保ちながら流せる電流。
- 太さとの関係:同じ条件なら、一般に太い導体ほど大きな電流を流しやすい。
- 条件による変化:周囲温度、布設方法、電線の種類、集合状態などで変わる。
- 表示の違い:mmは直径、mm²・sqは断面積を表す。
- 選定:許容電流だけでなく、保護機器、電圧降下、接続器具も確認する。
許容電流を理解するポイントは、「何sqなら何A」と数値だけを覚えず、「どの電線を、どの条件で使うか」を確認することです。表の条件まで読む習慣が、適切な配線選定につながります。


コメント