ELECTRICAL BASICS / 電気の基礎
電源は正常なのに、遠くの機器では電圧が低い。長い配線や、大きな電流を流す回路では、「電圧降下」が関係している場合があります。
電圧降下とは、電線などに電流が流れることで生じる電圧の差です。配線にも抵抗があるため、電源側と機器側の電圧は、いつも同じとは限りません。
この記事では、電線の長さ・太さ・電流との関係、基本の計算例、機器への影響、対策の考え方を初心者向けに解説します。
電圧降下とは?|配線にも電圧がかかる
電線は電気を流しやすい材料でできていますが、抵抗がゼロではありません。配線に電流が流れると、その抵抗に応じた電圧が生じます。
直流の基本回路では、電源電圧の一部が配線の抵抗にかかり、機器に届く電圧が小さくなると考えられます。
SUPPLY SIDE
電源側の電圧
機器へ電気を送る、出発点の電圧です。
LOAD SIDE
機器側の電圧
配線による電圧降下を考慮した、機器端子に実際にかかる電圧です。
たとえば直流電源が24Vでも、配線全体で1Vの電圧降下があれば、機器にかかる電圧は23Vになります。
配線抵抗による電圧降下は、流れる電流にも左右されます。同じ配線でも、無負荷時と運転中では機器側の電圧が変わることがあります。
なぜ電線が長いと電圧が下がるのか?
同じ材料・断面積・温度の電線では、長くなるほど抵抗が大きくなります。電流が通る距離が長くなるためです。
電線の抵抗は、基本的に次の関係で表せます。
CONDUCTOR RESISTANCE
R = ρ × L ÷ S
R:抵抗 ρ:抵抗率 L:導体の長さ S:断面積
同じ電流が流れるなら、配線抵抗が大きいほど電圧降下も大きくなります。反対に、断面積を大きくすると抵抗は小さくなります。
長さ・太さ・電流の3つを押さえる
| 変わる条件 | ほかの条件が同じ場合 |
|---|---|
| 電線が長くなる | 抵抗が増え、電圧降下が大きくなる |
| 導体の断面積が大きくなる | 抵抗が減り、電圧降下が小さくなる |
| 電流が大きくなる | 同じ抵抗でも、電圧降下が大きくなる |
| 銅導体の温度が高くなる | 抵抗が増え、電圧降下も増える |
「太さ」は直径と断面積を混同しないようにします。断面積が2倍なら抵抗は半分ですが、直径が2倍なら断面積は4倍になります。
電圧降下の基本式|ΔV = I × R
直流の抵抗回路では、配線に生じる電圧降下をオームの法則で求められます。
VOLTAGE DROP
ΔV = I × R
電圧降下[V]=電流[A]×配線の抵抗[Ω]
ここでのRは、計算対象となる配線経路の抵抗です。機器までの電圧降下を求める直流2線式の例では、行きと帰りの両方の配線抵抗を含めます。
片道の距離と、導体全体の長さを区別しましょう。電源から機器まで20mでも、行きと帰りがそれぞれ20mなら、抵抗計算に使う導体長は合計40mです。
計算例|DC24Vの機器へ20m先から給電する
次の条件で、配線抵抗による電圧降下を計算します。
- 電源電圧:DC24V
- 電源から機器までの片道距離:20m
- 行きと帰りの電線:同じものを使用
- 電線1mあたりの抵抗:0.01Ω/mと仮定
- 運転時に流れる電流:2A
EXAMPLE|往復の配線抵抗から求める
STEP 01|往復の導体長を求める
STEP 02|往復の抵抗を求める
= 0.4Ω
STEP 03|電圧降下を求める
= 0.8V
STEP 04|機器にかかる電圧を求める
この条件では、機器側の電圧は23.2Vになります。機器の許容入力範囲に収まっているかを確認します。
この例は、電源が24Vを維持し、運転時に2Aが流れているものとした学習用の計算です。端子やコネクターの接触抵抗、電源側の電圧変動などは含めていません。
同じ配線で電流が2倍なら?
配線抵抗が0.4Ωのまま、4Aが流れた場合は、電圧降下が1.6Vになります。機器側の電圧は22.4Vです。
同じ配線でも、電流が変わると電圧降下が変わることを押さえましょう。
電圧降下率とは?|電源電圧に対する割合
電圧降下率は、電圧降下が基準とする電圧の何%に当たるかを表したものです。
EXAMPLE|24Vに対して0.8V下がる場合
≈ 3.33%
同じ1Vの低下でも、100V回路では1%、24V回路では約4.17%です。低電圧の制御回路では、小さな電圧差でも割合が大きくなります。
計算した割合だけで使用可否は決まりません。機器の許容電圧、電源の変動、始動時の状態、適用する設計基準を合わせて判断します。
交流の電圧降下は、抵抗だけでは決まらない
交流では、電線の抵抗に加えてリアクタンスや負荷の力率なども関係します。また、単相2線式、単相3線式、三相3線式など、電気方式によって計算式が異なります。
そのため、直流2線式の「往復抵抗」の式を、三相回路などへそのまま当てはめないことが大切です。
実務では、ケーブルメーカーの技術資料などを使い、電気方式、片道距離、電流、導体抵抗、リアクタンス、力率に合った計算を行います。
電圧降下が大きいと、どんな影響がある?
制御機器が正常に動作しない
センサーやリレー、PLC関連機器などは、使用できる電圧範囲が決まっています。機器端子の電圧が下限を下回ると、動作不良やリセットなどが起きる場合があります。
電源装置の出力が正常でも、長い配線や接続部分の影響で、機器の端子では電圧が低くなっている可能性があります。
モーターの始動に影響する
モーターの始動時には、大きな電流が流れる場合があります。その電流で電源や配線に電圧低下が生じると、始動トルクが不足したり、始動時間が長くなったりすることがあります。
電圧が低いときの電流や動作は、モーターの種類、負荷、制御方式などによって異なります。
負荷の種類によって電流の変化が違う
一定抵抗の負荷なら、電圧が下がると電流と消費電力も小さくなります。一方、一定の電力を保とうとする電子機器では、動作範囲内で入力電流が増えることがあります。
抵抗負荷、モーター、定電力型の電源では振る舞いが異なります。接続している機器の特性に合わせて考えます。
電圧降下と、配線の発熱はどう違う?
配線抵抗による電圧降下はΔV = I × R、配線で熱に変わる電力はP損失 = I² × Rで表せます。
先ほどの例なら、2Aが0.4Ωの往復配線に流れるため、配線全体の電力損失は1.6Wです。
ただし、この1.6Wがすべて1か所で発生するわけではありません。配線に分散する発熱と、接触不良部分での局所的な発熱は区別して考えます。
許容電流と電圧降下は、別々に確認します。発熱上は問題のない配線でも、長さによっては機器側の電圧が不足することがあります。反対に、電圧降下が小さくても、許容電流を超えてよいわけではありません。
電圧降下を小さくする対策
- 配線を短くする:不要な迂回や延長を減らし、電源と負荷の配置を見直す。
- 導体の断面積を大きくする:適切に太い電線を選び、配線抵抗を減らす。
- 共通配線の電流を減らす:負荷の分散や給電経路の見直しを検討する。
- 接続部分を適切に保つ:端子やコネクターの接続不良、腐食、損傷を確認する。
- 始動時も確認する:通常運転だけでなく、大電流が流れる場面を考慮する。
設備によっては、負荷の近くに電源を設ける、高い電圧で送り必要な場所で変換するなどの設計もあります。絶縁・接地・保護・機器の適合性を含めた検討が必要です。
電圧が足りないからといって、電源電圧を安易に上げないでください。軽負荷時や近い場所の機器に過電圧がかかるおそれがあります。すべての運転条件で、機器の許容電圧を満たす必要があります。
現場では、どこを確認する?
電圧不足が疑われる場合は、電源側と機器側を分け、負荷が動いているときの状態を確認します。
- 電源側:負荷がかかったときも、必要な電圧を維持できているか。
- 配線:長さ・断面積・材質・電流が設計条件に合っているか。
- 接続部分:端子やコネクターに異常がないか。
- 機器端子:運転中や始動時に、許容電圧範囲を外れていないか。
配線途中で分岐している場合、区間ごとに流れる電流が異なります。すべての区間へ末端機器の電流だけを当てはめず、共通部分の負荷も考慮します。
実際の測定や接続部分の点検は、適切な測定器と作業手順で行います。通電中の端子を締め直すなどの作業は行わないでください。
まとめ
- 電圧降下:配線などに電流が流れることで生じる電圧の差。
- 大きくなる条件:長い配線、小さい断面積、大きな電流など。
- 直流の基本式:ΔV = I × R。
- 2線式の計算:行きと帰りの配線抵抗を含める。
- 実務:許容電流と電圧降下の両方を確認する。
電圧降下を理解するポイントは、「電線にも抵抗があり、そこへ電流が流れる」と考えることです。電源の表示だけでなく、実際に機器へ届く電圧まで意識すると、配線設計や不具合調査の理解が深まります。


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